医療関係
当社では、医院・歯科医院・病院の税務顧問を得意しております。また、医療法人化などの節税策、医療法人のM&Aなどのトランザクションサービスのみのご提供もしております。
医院・歯科医院・医療法人の税務顧問サービスでは、医療法人に特有の仕組みに対応したサービスのご提供をさせていただいており、医院・歯科医院・病院は社会保険診療報酬の概算経費の特例が認められていたり、事業税について社会保険診療報酬に対応する利益が非課税になるなど、一般の事業と異なる部分があります。
また、医院・歯科医院・医療法人のトランザクションサービスでは、最近お問い合わせが多い事業承継のほか、以下のような業務を多く取り扱っております。
医療法人化
個人事業として医院・歯科医院・病院を営んでいる先生であれば、医療法人化することにより節税メリットを受けられることがあります。
具体的には次のような節税メリットがあります。
①税率を低く抑えられる
個人事業として医院・歯科医院・病院を営んでいる場合には、先生に対して所得税が超過累進税率により最高で40%(住民税を含めると50%)課税されますが、親族を理事や従業員とし、給与を支払うことによって、所得分散効果により先生の税率を下げることができます。
また、医療法人の場合には所得税に代えて法人税が最高で25.5%(特定医療法人であれば19%、住民税を含めると約30%)課税されることで済みますので、将来の設備投資などに充てるための留保利益に対する税金も抑えられます。
②給与所得控除による経費の二重取りができる
医療法人化した場合、先生は医療法人から給与として利益を受け取ることになりますが、先生が受け取る給与は医療法人の経費となる一方で、その全額が先生において課税されるのではなく、給与所得控除額を控除した後の金額が先生において所得税の課税対象となります。
つまり、医療法人化することにより、給与所得控除の分は医療法人と先生の両方で経費となり、二重に経費計上することができます。
③退職金や生命保険を利用した節税が可能になる
親族に退職金を払ったり、生命保険の保険料を医療法人で支払うことにより、節税が可能になります。
MS法人(メディカルサービス法人)設立
医療法で規制されない業務を医院・歯科医院・病院から分離し、個人医院・病院とは別に株式会社や合同会社として設立するMS法人に委託することによって、医療法人化と同じような節税メリットを受けることができます。
また、事業規模が大きい場合には、医療法人化と組み合わせてMS法人も設立することで、さらにメリットを得られることもあります。
MS法人に委託する業務は、一般的に、診療報酬請求事務・会計処理事務、医院・病院の受付・窓口業務、医療機器や車のリースなどがあります。
医院・歯科医院・病院の事業承継
医院・歯科医院・病院を息子さんや娘さんなどの後継者に承継する場合には、個人医院・病院であるか医療法人であるかによって方法が異なり、税務上検討することも異なります。
①個人医院・病院の場合
個人医院・病院の場合には、形式的には先生の医院・病院を廃業して、新たに後継者の医院・病院として開業することになります。
そして、医療機器をはじめとする医院・病院経営に必要な資産は先生から後継者に売却することになります。
また、看護師や事務員などの人的資源については、いったん先生の医院・病院を退職してもらい、後継者の医院・病院で新たに雇用してもらうことになります。
ここで最も問題になりやすいのは、医院・病院として使用している不動産を先生が所有している場合です。
医院・病院として使用している不動産が先生の個人資産である場合は、その不動産を後継者に賃貸する方法と売却する方法がありますが、賃貸すると賃料が先生に蓄積されてしまい、相続時に多額の相続税が課税されてしまう恐れがあります。
一方で売却するとなると、後継者に買取るだけの資金があるかという問題があり、また、土地に含み益が生じている場合には、売却益が生じて課税されてしまうという問題があります。
これらを考慮すると、土地は先生に残したまま、建物だけを後継者に売却する方法が良い場合が多いです。
建物だけの売却であれば、売却代金も比較的少なくて済みますし、土地の含み益が顕在化することもありません。
あとは、地代をどのように設定するか(全く払わず借地権を発生させないか、相応の地代を支払って借地権を発生させるか)を検討することになります。
これは、医院を承継した後継者の所得税率と先生の所得税率のどちらが高くなるか、先生の相続財産がどのような見込みになるか、などを検証して決めることになります。
②医療法人の場合
医療法人の場合は、あくまでも法人が医院・病院を経営しているので、先生が引退するとしても、個人医院・病院の場合のように廃業と開業の手続きをしたり、看護師等の雇用をいったん終了して再雇用したり、医療機器等の資産を移転させたり、といった行為は不要です。
代わりに、出資持分を承継させることになります。現在の医療法においては、出資持分の定めのない医療法人しか設立できませんが、従前より存在する医療法人のほとんどは出資持分があります。
この場合の問題点は、医療法人の出資持分は医療法により剰余金を配当することができないことなどから、評価額が高額になりがちなことです。
従って、出資持分を相続することになると、多額の相続税が課税されてしまいます。
対策としては、出資持分のない医療法人に移行する方法か、出資持分を後継者に生前贈与する方法が考えられますが、出資持分のない医療法人に移行する方法は、医療法人の役員構成や運営方法などについて様々な要件を満たさなければ、医療法人において贈与税が課税されてしまいます。
一方で、出資持分を後継者に生前贈与する方法ですが、贈与税を抑えようとすると暦年贈与の基礎控除額110万円を利用して長期に渡って贈与するか、多数の人に分散して贈与するかになりますが、前者では時間がかかりすぎ、後者では出資持分の分散により経営上の揉め事になる可能性があり、いずれも好ましくありません。
そこで検討すべきなのが、相続時精算課税制度の活用です。
相続時精算課税制度の内容はこちらのとおりですが、どれだけ多額に贈与しても贈与税は2,500万円を超える金額の20%(通常の贈与では最高税率50%)で済むものの、贈与時の価格で固定されたうえで最終的には相続時に相続税で精算される点がネックとなり、一般の会社の事業承継では活用が難しい制度です。
しかし、医療法人の場合には医療法の規制により剰余金が配当できないことと、そもそもの事業が一般の会社の事業と比べて手堅いことから、医療法人の社員持分の相続税評価額は右肩上がりに増えていく場合が多く、贈与時の価格で固定されることが逆にメリットになる可能性が高くなります。
また、相続時精算課税制度は税金の観点では贈与税は仮払いのような性質であり、相続時に相続税と精算して確定することになりますが、法律行為としては贈与時点で社員持分は後継者に移転しているので、社員持分は相続時に遺産分割の対象とならず、相続時にトラブルが起こる可能性を排除できます。
医院・歯科医院・病院のM&A
先生の医院・病院の将来を考えた場合に、M&Aが役に立つことがあります。
例えば、医院・病院を承継する人がいない場合に、M&Aによって他の先生に医院・病院を売却する、あるいは、医院・病院を拡大していきたい場合に、M&Aによって戦略的に他の医院・病院を買収する、というような具合です。
M&Aに関する詳しい情報はこちらのとおりですが、医院・病院の形態は個人事業の場合と医療法人の場合があり、また、医療法人の場合は持分が有る場合と無い場合があり、それぞれの場合で次のように方法や課税関係が変わります。
①個人事業の場合
この場合は、事業譲渡という方法で行います。
売主から買主に対して医院・病院に関する医療機器や不動産など、事業に必要な資産と負債を個別に譲渡することになります。
売主の先生においては、通常、不動産に含み益があれば譲渡所得として20%の税率で課税され、営業権は一時所得として(営業権の価格-50万円)÷2の金額に対して総合課税されます。
②医療法人で持分がある場合
この場合は、売主から買主に持分を譲渡する方法と、売主側の医療法人が買主に事業譲渡した後に売主側の医療法人が解散する方法があります。
前者の方法では、持分の譲渡益に対して譲渡所得として20%の税率で課税されます。
後者の方法では、事業譲渡による利益から退任する院長等への退職金を差し引いた金額に対して、売主側の医療法人において法人税が課税されます。
また、法人税が課税された後の残余利益は売主である先生に払い戻され、当初の出資額を上回る払戻金がみなし配当として総合課税されます。
通常、後者の方法は税負担やコスト負担が大きくなり、手間暇もかかってしまいますが、前者の方法によると医療法人の隠れ債務(買主側で把握できなかった未払残業代や、患者からの訴訟請求、未発見の連帯債務、将来的に税務調査において何らかの追徴課税が行われる可能性など)も買主が負担してしまうため、デューデリジェンスをした結果、隠れ債務がある可能性が考えられる場合には、この方法が採用されることも多くあります。
③医療法人で持分が無い場合
この場合は、売主である先生が医療法人を退任して、買主の先生が医療法人の理事に就任する方法をとります。
売主は持分を譲渡して買主から代金を受け取ることはできないため、医療法人からの退職金という形で代金を受け取ります。
ただし、退職金は税務上、支払う医療法人において損金算入できる限度がありますので、その限度額では代金が不足する場合には、経営の引き継ぎ期間を調整して、その間の役員報酬という形で補てんすることになります。
また、売主側の医療法人が買主に事業譲渡した後に売主側の医療法人が解散する方法もとれますが、この方法による場合、上記②と異なり、最終的な残余利益を売主である先生に払い戻すことができません。
持分の無い医療法人の場合、解散時の残余利益は国庫等に帰属してしまいます。
従って、この方法によるのは退職金の支払いなどによって、医療法人に残余利益が残らないことが見込まれる場合に限られます。
④医療法人と医療法人の合併
売主側も買主側も医療法人である場合には、医療法人を合併させる方法もあります。
この場合には、税務上の適格合併の要件を満たさないと、消滅する方の医療法人において資産負債を時価で売却したものとして課税されてしまったり、消滅する方の医療法人の繰越欠損金が引き継げずに無くなってしまったりという不利益を被る可能性があります。
合併が税務上の適格合併となるための要件はいくつかありますが、医療法人の合併において特に気を付けないといけないのは、売主側の医療法人と買主側の医療法人の規模(売上や社員数など)が5倍以内になっているか、という要件です。
従って、規模が5倍以上違う医療法人同士で合併する場合には、特に注意が必要です。
また、合併する場合には、消滅する方の医療法人の持分保有者に対して現金等を渡さずに、継続する方の医療法人の持分のみを渡すことにより、消滅する方の医療法人の持分保有者には持分売却益に対する課税がされない取扱いがあります。
医療法人を売買する際に合併を利用するのであればこの取扱いの利用は馴染みませんが、2つの医院の先生が協力してこれから経営していくようなケースで合併を利用するのであれば、この取扱いは有効です。
医院・歯科医院・病院の経営分析サポート
先生方は医療に関しては素晴らしい専門知識をお持ちのことと思いますが、経営数値に関する知識はどの程度お持ちでしょうか。
事業規模が小さいうちは感覚的に経営状態を把握することもできると思いますが、規模が大きくなると、決算書やキャッシュフロー表などの数値を正しく理解しなければ、感覚と実際がずれてきたり、思わぬ危機に直面してしまったりすることになります。
患者さんは順調に増えているのに毎月の資金繰りは苦しかったり、設備投資のタイミングに悩んだりすることはないでしょうか。先生方が医院の経営状態をタイムリーに把握できるように、サポート致します。
また、資金調達に関するご相談も承ります。