繰越欠損金の引継ぎにおける特定役員引継要件

2014-04-18

ヤフーが合併により被合併法人から引き継いだ繰越欠損金約540億円が否認された事案について、平成26年3月18日に東京地裁の判決がありました。

この事案では、ソフトバンクから買収した会社が被合併法人であり、ヤフーと被合併法人は特定資本関係が生じてから5年以内であったため、ヤフーが被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐためには、みなし共同事業要件を満たす必要がありました。

この点ヤフーは、買収前に被合併法人に役員を送り込み(ヤフーの代表取締役が被合併法人の副社長となりました)、当該役員が合併後もヤフーの役員となることで、特定役員引継要件を満たし、もってみなし共同事業要件を満たし、繰越欠損金を引き継ぎました。

争点の一つとなったのはこの特定役員引継要件で、ヤフーが被合併法人に役員を送り込んでからわずか2ヶ月で合併が行われたことや、当該役員以外の被合併法人の役員は合併により全員退任したことなどから、みなし共同事業要件を形式的に満たすための行為であったとして、組織再編税制における包括的否認規定(法人税法132条の2)により否認されています。

この判決文における東京地裁の判断の部分に、次のような記載があります。

「みなし共同事業要件に係る特定役員引継要件が、特定役員引継要件に形式的に該当する事実さえあれば、組織再編成に係る他の具体的な事情を一切問わずに(すなわち、例えば、①特定資本関係発生以前の時期における当該役員の任期、②当該役員の職務の内容、③合併後における当該役員以外の役員の去就、④合併後における事業の継続性や従業員の継続性の有無、⑤合併により引き継がれる事業自体の価値と未処理欠損金額との多寡、⑥被合併法人と合併法人の事業規模の違いなどの事情を一切問わずに)、未処理欠損金額の引継ぎを認めるべきものとして定められたとはいえず、特定役員引継要件に形式的に該当する事実があるとしても包括否認規定を適用することは排除されないと解することが相当である。」

特定役員引継要件は形式的に満たすだけでは認められないということは、実務上は従来より意識されていたと思われますが、上記によれば、控訴審でどのような見解が示されるかはともかく、現時点の東京地裁の見解として形式的な特定役員引継は否認事由になることが明らかにされ、また、考慮すべき事情の一例が示されています。

 

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